歴史的大発見に!ギョベクリ・テペ遺跡

公開日 2021年9月21日 最終更新日 2021年10月5日

ギョベクリテペ(Göbekli Tepe)は、ギョベクリ=太鼓腹、テペ=日本語のてっぺん、「太鼓腹の丘」という意味だ。「世界最古の文明があった」と世界中で話題になり、2018年にユネスコ世界遺産リストに登録された。「この遺跡は約12000年前の世界最古の遺跡です」と言われてもピンとこない方も多いのではないだろうか。少なくとも、私はピンとこなかった。いろいろ調べてみると、これが歴史認識を覆す大発見なのであった。Netflixドラマ『アティエ』の舞台ともなったギョベクリ・テペとは?

◆お知らせ◆
2019年7月現在、外務省海外安全ホームページによれば、シャンルウルファ県は「不要不急の渡航はやめてください」の対象エリアです。シリア侵攻により、東南アナトリアは情勢が不安定です。シャンルウルファへの渡航はおすすめできません。

 

ギョベクリテペってどこにあるの?

ギョベクリテペ/シャンルウルファ・トルコ

ギョベクリテペは、アナトリア半島の南東、Şanlıurfa(シャンルウルファ、またはウルファともいわれる)から東に20kmほど離れた場所にあります。近くの村まで3km離れていて、周囲には何もない、ただ広大な大地。この一帯は、ギョベクリとよばれる集落です。紀元前9000年頃の遺跡とされてきましたが、「Tepe(テペ:てっぺんの意)には、もっと古い遺跡がある」とされてきました。農夫がこの地を耕そうとしたとき、大きな石にあたったことから発見につながったのだそうです。

さらに、歴史認識を簡単におさらい

引用元:Wikipedia

地質時代 石器時代 期間 主な歴史認識
旧石器時代 石で道具を作り始めた時期、狩猟・採集生活
前期旧石器時代 約200万年前~約10万年前 火の使用や言語の使用
中期旧石器時代 約9ないし7.5万年前~約3.5万年前 氷河時代とも呼ばれ、人類が居住するには過酷な気候、死者の埋葬
後期旧石器時代 約3.5万年前~紀元前約1万年 ナイフ形石器、衣服の着用、装身具の使用、洞窟壁画の登場、呪術的な行為の発生
中石器時代 紀元前1万年~紀元前8・6000年 氷河が後退しはじめ気候が温暖になったため植物が繁茂し、動物が増えるなど、人間が採集狩猟で食物を得やすくなった。近東地域(地中海沿岸のシリア、エジプト、小アジアなどの地域)では、更新世終期には農業は始まっていた
新石器時代 紀元前8000年~ オリエントの肥沃な三日月地帯では、紀元前8000年頃自給自足の生活へ

これによれば、肥沃な三日月地帯にあるギョベクリテペでは、紀元前8000年ごろに農業が始まり、定住生活・自給自足の生活が始まったとされています。ちなみに、日本の集落が発見されているのは、中石器時代以降のものだそうです。

発掘の歴史

By Teomancimit – Own work, CC BY-SA 3.0, httpscommons.wikimedia.orgwindex.phpcurid=17377542

初めてギョベクリテペの発掘が始まったのは、1963年。アメリカ・シカゴ大学とイスタンブール大学の協力の元で行われました。その後、1995年にはドイツ考古学研究所が協力。2007年以降、当時のトルコ大統領令のもと、発掘が続けられました。

世界最古の神殿

ギョベクリ・テペ/シャンルウルファ・トルコ

ギョベクリテペ は、円環状に積み重ねられた囲いでできた、いくつかの「聖域」と見られる空間から成り立っています。円環状の巨石の中には、雄牛・狐・戦士などのモチーフが刻まれたいくつもの巨大なT字型の石碑が建てられています。モチーフはほかにも、虫や鳥、蛇、サソリ、羊、ライオン、人間のモチーフや彫像などが多く出土。約20周中に200本を超えるT時の柱があったことが確認されています。

ギョベクリテペ想像図

「円環状の巨石群」からは、サークル状に石と石碑が積まれた4つの神殿と思われる跡が発掘されています。12000年前に人々が定住していたことだけでも、定説を覆すものでしたが、一神教を信仰する神殿が発見されたことで、それまでの紀元前4000年前のマルタ島の神殿が最古であるとの通説までも覆したのです。宇宙人が何らかの意図で建てたのでは?、シュメールの遺跡だ、等さまざまな憶測が飛び交いましたが、結局のところ解明は未だされておらず。何らかの文明が、通説よりも前に存在していたことをギョベクリテペは証明しつつあります。現時点でも、十分に科学的データでも十分に証明できるレベルで、世界の歴史学者の認識を塗り替えました。

ギョベクリテペはどんなところ?

ギョベクリテペ/シャンルウルファ・トルコ

ビジターセンター、切符売り場、駐車場があり、発掘現場は屋根で覆われています。4つの円形の神殿は、隣同士になっていて、コンパクトなエリア内を、歩き回って上から見ることができます。見学には実際、1時間もかからないかもしれません。

ギョベクリテペ/シャンルウルファ・トルコ

現在、発掘調査はまだ5パーセントほどしか進んでいないようですが、発掘調査で住宅は見つかっていません。ギョベクリテペは、集落の人々がシャーマニック儀式を行うような場所だったと推定されています。しかし、なぜ円形にストーンが積まれているのかは謎のまま。そのT字型の石碑もです。囲いの中心にも石碑があるようですが、それが宇宙の中心や、神を示しているのは確かなのでしょう。

ギョベクリテペ/シャンルウルファ・トルコ

これからどんどん解明されていくのでしょうね。楽しみです。

見ごたえ十分!シャンルウルファ考古学博物館

シャンルウルファ博物館/トルコ

ギョベクリテペで発掘されたほとんどのものが展示されている、シャンウルファ博物館は必ず訪問して、その驚くべき発見をぜひご覧ください。この博物館の広さは、トルコでも最大級のものです。ギョベクリテペやヒッタイトなど、入口から順番に歴史をたどって見ていけるように工夫されていて、じっくり見てまわると、2時間以上かかりそう。見所はなんといっても、この巨石群の再現エリアです。モチーフがとてもリアルに見てとれ、保存状態の良さに驚くばかりです。

シャンルウルファ博物館公式サイト

sanliurfamuzesi.gov.tr

goo.gl

聖書に登場するシャンルウルファへ

ズヴァニエ・モスク/シャンルウルファ・トルコ

ギョベクリテペがある地域は、エデンの園だったのではないか、という説もあります。それに、シャンルウルファには、アブラハムの生まれた場所「ウル」とされる場所があります。とんがり屋根でハチの巣住居のハランもまた、アブラハムが住んでいた町とされます。トルコの西側にはない、より中東よりなエキゾチックな雰囲気のシャンルウルファは、好きな人にはたまらない場所です。世紀の大発見とともに、この街を十分満喫してみたいですね。

最後までご覧いただき、ありがとうございます。

※この記事は、トルコのとりこ(2019/7/17)をリライトしたものです。

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