アルメニア教会・世界遺産アニ遺跡と国境の街カルス

公開日 2021年10月3日 最終更新日 2021年11月7日

アルメニア国境沿いで最大の都市カルスの町は、コーカサスとロシアの香りが漂う、トルコでもめずらしい町です。郊外には、保存状態の良いアルメニア教会が残されていて、2016年にユネスコ世界遺産リストに登録されました。高級チーズと蜂蜜がとてもおいしいことで有名なカルスとアニ遺跡を旅してみませんか。

カルスとアニについて

カルスとアニ遺跡はココ

東アナトリア地図

世界遺産に登録されたアニ遺跡は、アルメニアと国境を接する東アナトリア地方のカルス県にある。カルスはアルメニアと国境を接する町で、町全体が高原に位置する。冬は極寒で、夏は雨が多く涼しい気候。カルスを訪れるなら当然夏がいいのだが、夏はとても短い。盛夏でも25℃ほどにしか届かず、夕方以降は上着が必要なほど冷える。

トルコの地域区分

首都アンカラからカルスまでバスで行くとなると、15~16時間ほどかかる。トルコであっても、見える景色はコーカサス地方の色に染まった景色で、モスクとアルメニア正教会が混在する地域である。

 

カルスとアニの歴史

カルス城から見たカルスの町/トルコ

カルスは10世紀頃、コーカサス地方一帯を支配する、バグラトゥニ朝アルメニアの首都だった。人口10万人ほどが住む大きな都市だったけれど、現在は県全体で10万人ほどが居住するエリアになったらしい。

バグラトゥニ朝アルメニア/Wikipedia

この後、首都はアニに遷都。この王朝は200年ほど続きますが、東ローマ帝国に占領されて以降、オスマントルコ→ロシア→現トルコと次々と支配者がかわっていくことに。この王朝は、モンゴルの侵略と1319年に発生した破壊的な地震の後に衰退してしまった。

カルスの観光スポット

まずは、拠点となる街・カルスにある観光スポットをさくっと観光してみよう。カルスで見るべきは、城塞とモスクだ。町中には、名物カシャルチーズやコムハニーのお店が並んでいる。

カルス城

カルス城/カルス・トルコ

13世紀頃、バグラトゥニ朝アルメニア時代に建てられたカルス城。城壁は16世紀頃、オスマン帝国のムラト3世によって築かれたとされているそうだ。実際には、アルメニア王朝時代に築かれたものを修復したものを利用していたとされている。度重なる攻撃にも持ちこたえた頑丈な城塞だったのだとか。

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キュンベット・ジャーミィ

キュンベット・ジャーミィ/カルス・トルコ

カルス城の南には、えんぴつ型のキュンベット・ジャーミィ(Kümbet Camii)がある。市内のアルメニア教会の1つで、932年から937年の間に建てられたものだ。1064年、アラブ人支配になった時、この教会はモスクに改修され、キュンベット・ジャーミィと名付けられた。 ところが、カルスががロシアの支配下に入ると、今度はロシア正教会に様変わり。1964年に今度は博物館に生まれ変わり、発掘調査で出土したものを所蔵・展示していた。 1993年から現役のモスクとして利用されている。カルスで一番の見どころといってもいい、私のお気に入りの建物だ。

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世界遺産・アニ遺跡

聖グレゴリオ教会/アニ遺跡・カルス・トルコ

カルスの町から東へ40km車で移動した場所にあるのが、世界遺産に登録された国境の町アニだ。一時期は、バグラトゥニ朝アルメニアの首都であたアニだが、現在はアルメニア高原の上に、多くの廃墟となった教会が残されているのみ。古代、ここはシルクロードとして重要な交通の要所であったとされている。1001もの教会があったとされるほどにたくさんの教会、それとキャラバンサライがあり、これらの町は要塞壁に囲まれていた。

アニ大聖堂/アニ遺跡・カルス・トルコ

広い大地にちょこん、ちょこんと残された教会たち。中でも、アニ大聖堂は13世紀に修復して建てられたもので、フロント部分はその当時の面影をよく残している。川沿いにある教会は、アニを象徴する教会となっている聖グレゴリオ教会。教会が建っている川の向こうの広い大地は、もうアルメニアだ。

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カルス⇔アニ遺跡送迎バス

カルス アニ
9:00 11:30
13:00 15:30

※上記は2019年夏時間です。冬期はバスが一本のみになります。ご注意を。
※運賃は無料。
※乗り場は、Gazi ahmet Muhtar Paşa Konağı(ガーズィアフメットムフタルパシャコナック)前から出ます。

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カシャル・チーズと蜂蜜生産地

カルスで放牧されている牛/トルコ

カルス名物といえば、チーズ・蜂蜜・キリム・絨毯・フォーオクダンス。中でも、カシャル・チーズと蜂蜜は味見だけでもしておいた方がいいものだ。カシャルチーズは、ピデなどには欠かせないとろけるチーズ。はちみつは完全オーガニックの蜂の巣ごとのコムハニー。どちらも過去に何年も連続で賞を受賞したほどに美味で有名なもの。大都市のホテルでは、巣ごと出されていて、市販されている蜂蜜とは一味も二味も違う、蜂蜜本来の味を味わえる絶品の味。お店はカルス市内に複数ある。

カシャルチーズ/カルス・トルコ

カルスのコムハニー/トルコ

旅する時期は?

アニ遺跡/カルス・トルコ

カルスには雪質が良いことで有名なスキー場があり、年間120日オープンしているのだそう。それだけ寒い地域ということであり、雪のない夏の時期は短くなっている。訪れるなら、色とりどりの花々が高原を彩る、5月~9月がおすすめだ。

カルスとアニの治安について

カルス県安全情報

長い間、トルコとアルメニアを行き来する道路は封鎖されてきた。理由は、「アゼルバイジャンのある町を、アルメニアが占領しようとしているから」という理由であった。現在、封鎖は解除され、自由に行き来できるようだ。南部の国境地域と違って、アルメニア国境は平和な状況だけれど、外務省の安全情報はレベル1「十分注意してください」がずっと発出されている。渡航の際には、外務省の「たびレジ」に登録して、安全な旅を心掛けたいものだ。

アクセス

イースタン・エクスプレス/TCDD・トルコ

カルスは、トルコの東端にある町なので、どこから行くにも陸移動は遠すぎる。空路一択だ。
カルス・ハラカラニ空港へ、イスタンブール、アンカラ、イズミルから、トルコ航空・アナドルジェット・サンエキクスプレスがとばしている。
カルス空港から市内までは空港リムジンバス(Havaş:ハワシュ)でいくことができる。

カルス・ハラカラニ空港(KARS HARAKANİ HAVALİMANI)公式サイト

www.dhmi.gov.tr

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最後までご覧いただき、ありがとうございます。

※この記事は、トルコのとりこ(2019/8/3)をリライトしたものです。

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