
日本の森林セラピーとウェルビーイング・トラベル
公開日 2019年10月3日 最終更新日 2021年10月2日
東北出身の私は、「森林セラピー」なるものを嘲笑っていたと思う。そこら中に山や森があるのに、いや、それしかないのに、森林に癒されるとはおかしな話だ、と思っていたのだ。しかし東京在住となってからは、わざわざ森林浴に出かけるようになっている。日本の森林や山々は、国土の6割にも及ぶ。こんなに緑が豊かな国は他にはない。どの国に旅しても、「緑が少ない乾いた大地」と思うのは、そのせいであろう。ダイナミックな大自然が魅力の外国とは違って、繊細で湿潤な日本の森林浴は、Green Therapyとして外国人観光客に人気らしい。コロナウイルスをきっかけに、旅の目的やスタイルをそろそろ変えてもいいのかもしれない。
森林セラピーと陰陽五行

屋久島
コロナウイルスが流行してから、「これからの旅のカタチ」として注目されている、ウェルネス・ツーリズム。ステイ・ホームが叫ばれていた時も、マスクをしてウォーキングをしながら近くの公園で緑に触れることは、都民にとっては欠かせないことであった。ずっと家にいると頭がおかしくなりそうだった。皮肉にも、「ウェルビーイング」の大切さを、コロナウイルスに再認識させられたカタチだ。森林浴は、人の心と身体とを健康に導く力があることが、科学的に立証されているらしい。緑が私たちの身体にどのように影響を与えていくのか、については、古代中国の陰陽五行に照らし合わせてみることができる。
森林セラピーと陰陽五行の関係性
- 大地深くに動くマグマ(火)は口腔と心臓を癒す
- 大地に眠る鉱石は肺を癒す
- 土(土黄)の氣は消化器官を癒す
- 清流は耳と腎臓とを癒す
- 緑色と芽吹きは目と肝臓とを癒す
例えば、パソコンやスマホを見過ぎて疲れた目のためには、森の緑や芽吹いている木の実等を見て、その氣をいただくことで癒されていくとする。
特定非営利活動法人 森林セラピーソサエティ
この、日本の森林セラピーを中心となって活動されているのが、特定非営利活動法人 森林セラピーソサエティだ。全国に認定された「森林セラピー基地」と「セラピーロード」なるものがあり、合計60ヶ所以上ある。

奥多摩
十二湖や奥多摩といった既知の人気スポットと、まだ知られざる森林セラピーのスポットとがある。「認定の森」「セラピーロード」は、今後どんどん増えていくのだろう。自然だったら何でもOKというわけではなく、きちんとセラピーになるかどうか、条件に適合しているかどうかを審査されているところも、とても興味深い。

吉野山
森林セラピーガイド、森林セラピストという資格習得も可能のようで、実際にガイドが案内してくれるツアーがある。(英語/日本語)

芦ノ湖畔
東京都心から日帰りで行ける場所も多く掲載されている。このページを参考に、次のプチ旅のプランを練るのも良さそうだ。
旅の目的は「観光」から「体験」へ

日本の田舎
少し前までは、観光地やテーマパークを目的地とする旅をする方が多かったが、最近では、「田舎暮らし体験」「農業体験」のように、普段経験できないようなことを家族・子どもたちと一緒に経験する旅が増えてきていた。

日本を旅する
外国人が旅する場合も、旅目的の多くは、トレッキングや体験型がほとんど。年々、その傾向は強くなってきているようで、世界的に「旅」の形が変わってきている。せっかくの休暇を、観光ばかりに目を向けるのは、確かに楽しいけれど正直疲れる、というのが本音だ。
「体験」から「ウェルビーイング」の旅へ

ウェルビーイング旅のイメージ
コロナウイルスの流行はいつかおさまる。それに、旅することがこの世界からなくなることは絶対にない。旅は生命そのものだからだ。コロナウイルスが収束しても、免疫力を上げておかねば、様々なトラブルに対応できなくなる。日常のみならず、休暇こそ、心身ともに養生する良い機会なのだ。家族全員の心と身体が安らぎ、癒され、時間に余裕があり、本当の意味で身体と心の療法をリフレッシュさせることは、これからの新しい旅のカタチになるだろう。