パン発祥の国・トルコで食べられるパンとペストリーとは?

トルコのパンは本当に美味しくて、色々な国でパンを食べたけれど、小麦の味と香りが全然違う。焼きたてのパンは外がカリッと、中はもちふわ。パン消費量世界一を誇るトルコのパンは種類も豊富で、食堂で注文するとバゲットは無料で食べ放題。トマトソースやオリーブオイルやバターをふんだんに使うトルコ料理には、バゲットが欠かせないのだ。トルコのパンについて、色々調べてみた。

パンの発祥はトルコ東部

ユーフラテス川/シリア

メソポタミア文明が生まれたチグリス・ユーフラテス川の上流は、トルコ東部にある。今から8000年前に初めてパンを食べたのは、この地であるとされているため、トルコ発祥としているようだ。麦を石でつぶして、平たい石の上で焼いただけの、無発酵の堅くて平たいものが、パンの始まりとされる。

ユフカづくり

トルコを含む中東~コーカサス地方には、ユフカやラワシュといった薄いクレープ状のパンがあって、今もタンドールや鉄板で作られている。歴史あるこれらのパンはユネスコ無形文化遺産に登録されていて、お肉や野菜を挟んだり、重ねてスイーツやペストリーを作ったりと、料理には欠かせないものになっている。

トルコのパン屋さん

トルコでは、過去に消費量が世界一となったことがあるほど、パンはよく食べられている。トルコ人にとってパンはとっても大切で、「命と同じくらい大切だ」と言う人までいるらしい。アナトリアの肥沃な大地で育った小麦は良質とされ、スペルト小麦などの栽培にも力を入れている自治体が多い。

トルコのパンの種類

パンの種類としては、世界的に食べられているパンと同じく、全粒粉パン、天然酵母パン、ライ麦パン、そば粉パン、オーツ麦パンがあり、白いパンはなるべく避けようという動きはあるようだ。この他にトルコに多数ある種類のうち、特徴のあるパンを思いつく限りまとめてみた。

1.エキメキ(Ekmek)

トルコのバゲット・エキメキ

食事パンの基本ともなるバゲットは、食事やおやつにはなくてはならない存在。ハルク・エキメキとよばれる行政主導のパン屋さんでは、1本だいたい30円くらい。日本と比べると下手したらゼロが1つくらい安いかもしれない。

カイマクとはちみつ

朝はハチミツとカイマクをたっぷり塗ったもの、お昼はケバブとともに、夜は煮込みとともに、大活躍のバゲット。昔は、バゲットにハチミツとヨーグルトをたっぷり塗って、おやつとして食べていたそうだ。パンが大好きなトルコ人たちは、一人で1日1~2本は食べるそう。日本人にも大人気のサバサンドは、このパンを半分にしたものに半身のサバを挟んでいただくのだけれど、おいしいから平らげてしまう。

2.シミット(Şimit)

シミット

私がトルコのパンで一番好きなのが、シミット。日本語ではゴマパンとよばれる。ゴマがたっぷりのシミットは顔の大きさくらいあるので、一個食べたら満腹になる。半分に切ってチーズやトマトをはさんだサンドイッチも美味しくて、シミット・サラユのような専門店もある。

シミットのサンドイッチ

街中では、シミットの屋台や、観光地では頭にシミット・タワーを乗せた人が売り歩いていたりする。アンカラのゴマパンは、アンカラ・シミットとよばれ、特別においしいことで知られている。

3.バズラマ(Bazlama)

バズラマ・エキメキ

日本語にすると、フラットなパンという意味のバズラマ・エキメキは、バズドゥルマ、バズディルメ、タプルなど名前こそ少し変わるものの、トルコ全土で食べられている「トルコのホットケーキ」。イーストでふっくら発行させた生地を鉄板又はフライパンで両面こんがり焼き上げたら、バターをたっぷりかけて食べる。

4.ユフカ・ラワシュ(Yufka/Lavaş)

ラワシュ

ユフカとラワシュは、中東からコーカサス地方一帯で食べられている無発酵の薄いクレープ状のパンで、ユネスコの無形文化遺産に登録されている。タンドール・パンともよばれ、昔は釜の中にはりつけて焼いていた。今は鉄板で焼かれていることが多いようだけれど、田舎ではタンドールで焼いている家もある。ユフカはパイ生地のように、スイーツやペストリーに使い、ラワシュはシシ・ケバブなどを野菜とともに巻いてラップサンドのようにして食べることが多い。

5.コーンブレッド(Mısır Ekmeği)

コーンブレッド

日本ではあまり見かけない(と思う)コーン粉を使った黄色いパンは、白パンより栄養価が高い。主に黒海地方で食べられていて、黒海名物ハムシ(いわし)料理とともに食べられる。

6.ピデ・エキメキ(Pide Ekmek)

ピデ・エキメキ

ピデ・エキメキは、日本ではピタパンとよばれるもの。半分に切って中にドネル・ケバブを入れたら、日本でもメジャーなケバブ・サンドになる。

ピデ・エキメキ

ピタパンは、ドネル・ケバブの他にも、アダナ・ケバブやフルン・ケバブといったお肉料理とともに提供されることが多い。別々に食べてもいいし、パンに挟んで食べてもいい。

ピデ・エキメキ(ラマザン・ピデ)

また、断食月の特別な夕食に食べられるラマザン・ピデ(Ramazan Pidesi)は、断食月のパン屋さんには長い列ができることもある。

7.ケテ・パン(Kete Ekmeği)

ケテ・パン

カルスなどの東部アナトリアで作られていたケテ・パンは、カルス名産であるヨーグルトやバターを使った生地を薄く何層にも重ねて、生地の間にバターとバター入りの小麦粉をたっぷり挟んでオーブンで焼く。昔はタンドールで焼き、朝食として食べられていた。今はトルコ全土で食べられるようになり、主に断食月の朝食で好まれて食べられることが多い。小麦粉とバターをたっぷり使っているパンなので腹持ちがいいし、香りと甘みがあっておいしい。

8.トラブゾン・パン(Trabzon Ekmeği)

下に並ぶのがワクフィケビルパン/トラブゾンのパン屋さん

トルコのパン屋さんに行くと、バゲットと並んでおいてあるこのパンは、黒海地方のグルメ・シティ、トラブゾンのワクフィケビル地区で食べられていたパンであったことから、ワクフィケビル・パン(Vakfıkebir Ekmeği)ともよばれる。どっしりと重いパンは、2~2.5kgもあって、作るには技術が必要らしい。

9.ボレキ(Börek)とポアチャ(Poaça)

ボレキ

ボレキやポアチャをパンの種類としてカウントするのも少し変だな、と思ったのだけれど、トルコを代表するペストリーなので入れておこう。ボレキは、中東やコーカサス地方でよく食べられていて、軽いランチに、お茶会やおやつに、トルコでもよく食べられている。スイーツ店などでもメニューの一つとして提供していて、チーズやひき肉やほうれん草などを、ユフカ(クレープ状の薄い無発酵パン)に巻いて焼き上げたもの。

ポアチャ

ポアチャは、さくっとした食感が楽しめるトルコ版のスコーンといわれる。中身はチーズやイタリアンパセリを入れるのが王道。チャイにとてもよくあうので、何個も食べてしまいがちなのだけれど、高カロリーなので食べすぎ注意なのだ。

オスマンル・オッカル・パン

思いつく限り…と思ったのだけれど、まだまだある。オスマン帝国時代によく食べられていた巨大なパン:オスマンル・オッカル・パン(Osmanlı Okkalı Ekmeğei)、黒海地方生まれの硬いパン:タシュ・フルン・パン(Taş Fırın Ekmeği)、ソフト・バゲット:ソムン・パン(Somun Ekmek)などがある。

パンは無料で食べ放題

ホテルに並ぶパン

街中のロカンタやホテルの朝ごはんなど、頼まなくてもバゲットが必ずついてくる。注文した料理のお皿には、ピタパンやピラフが付け合わせでついていても、バゲットは必ず別についてくる。基本的に食べ放題でお替り自由で、食べ切りそうになると、「おかわりいるか」と尋ねられる。ベーカリーから取り寄せているお店と、店舗内で焼き上げているお店にわかれる。パンがおいしい店ってだいたい料理もおいしい。焼き立てのパンは明らかに違う。カリふわのパン一度食べたら忘れられない。

屋台でロカンタでフルンジュで

屋台に並ぶパン

食堂やレストランで食べるパンも美味しいけれど、屋台のパンも美味しい。Fırıncı(フルンジュ)と書いてあるベーカリーをのぞいてみると、お父さんたちが汗だくで、ものすごい勢いで焼き上げているパンを、片っ端からお客様が買っていくさまを目の当たりにできる。だいたい手招きされて、制作工程を見学させてくれたり、焼きたてを食べさせてくれたりすることが多かったりする。イスタンブールでは、ペストリーやスイーツ系のパンを買えるお店が増えてきた。いわゆる食事パンは断然トルコの方がおいしいし、ペストリー系は日本の方が美味しいかなぁと私は思う。

トルコのパン屋さん

アンカラやイスタンブールなどの大都市圏では、「Halk Emkek(ハルク・エキメキ)」と書かれた小さなお店の前に、朝から行列しているのを見かける。ハルク・エキメキは行政が運営しているパン屋で、一般的なパン屋よりもパンが大きめで、安くて、しかも美味しいといわれる。このハルク・エキメキの価格が上昇するとニュースになるほどの重大事になるのだ。

 

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※この記事は、トルコのとりこ(2019/7/3)をリライトしたものです。

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